第60回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成31年4月5日(金);午後7時~8時30分

<症例>

68歳、女性

<傷病名>

直腸癌、直腸癌術後再発

<発表者>

①医師会コーディネータ¬ーより家族背景などについて
 八幡浜医師会・清水 建哉ケアマネージャーから
②主治医より病状経過について
 旭町内科クリニック・森岡 明医師から
③訪問看護の経過について
 訪問看護ステーションSetsuko・菊池 世津子看護師から

<症例>

PDFファイルをダウンロードしてご参照ください

<議論の要点>

  • オピオイドのスイッチングの際、換算表の考え方。
  • 終末期にある患者さんの、訪問入浴の在り方。緩和ケアの視点から。
  • その他。

<職種別参加者数>

合計  55名
医師 11名 社会福祉士 3名
歯科医 2名 ケアマネ 13名
保健師 4名 介護 6名
薬剤師 2名 その他 0名
看護師 12名 事務 2名

<アンケートから>

以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  • ケアマネ

    緩和ケアで大切なことは、「お風呂に入りたい」とご本人が希望すれば、負担やリスクがあっても入浴できるようACPにより、ご本人、ご家族、チームメンバーが一致した気持ちで関われるように調整していくことだと思いました。

  • ヘルパー

    日々、声掛けを大事に、心に寄り添っていきたいと思います。

  • 看護師

    患者様のケアは勿論、家族のケアの大切さを勉強させてもらいました。

  • ケアマネ

    今回のテーマは、主に終末期の入浴についてでした。今までの検討会でも、入浴後数日で亡くなられる症例がありました。チームメンバーが「してあげたい」と思い、本人、家族の意向を汲み取ってあげて、全体が極力一致する方向性で、結果的に「やってよかった」と皆が思えたらいいのではないでしょうか。本人にとって満足のいく最期が送れることが大切だということが確信できました。

  • ケアマネ

    私の担当事例で亡くなる前日に訪問入浴を実施したことが良かったのか。本人の感想が聞けなかったことが気になっていました。全体の合意が大事で、命にかかわる何かをする時には丁寧にすること。これからの支援に活かせたら良いと思いました。

  • 社会福祉士

    これまであまり詳しくお話を伺う機会がなかった訪問入浴のスタッフさんのお話が聞けて本当に新鮮でした。

  • 介護士

    今回、訪問入浴について話し合いがあり、実際、終末期の利用するタイミングの難しさや、本人や家族の考えなどをきちんと聞いて、安全に入浴できる方法を考えていきます。

  • 薬剤師

    全てを覚悟した上で、本人の希望を優先することが大切なのだろうと思われます。終末期においては、特に各人が心身ともに余裕を持ち、喜びを分かち合うこと、如何に充たされた時間を持てるかを最終目的とすることで、少し道は見えるかもしれないと思いました。

    服薬困難となった時の察知の仕方が私の役目かと感じました。また、室内全体を見渡すこと、口腔内の乾燥にも注意が必要かと思われます。

    ただ、「口」は楽しむために残しておくという言葉は、心にしみました。忘れてはならない事と思われます。

  • 保健師

    終末期の入浴の事例は、本人の「入浴して気持ち良い」を目指して関係者の合意を得る事の大切さとケアマネの覚悟が必要で、これに関してはケアマネも事例を通して学習を重ねていく必要があると思います。

第59回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成31年3月1日(金);午後7時~8時30分

<症例>

70歳、女性

<傷病名>

食道癌

<発表者>

①医師会コーディネータ¬ーより家族背景などについて
 八幡浜医師会・清水 建哉ケアマネージャーから
②主治医より病状経過について
 市立八幡浜総合病院・的場 勝弘先生から
③緩和ケアチームの取り組みについて
 市立八幡浜総合病院・大塚 菜穂子看護師から

<症例>

PDFファイルをダウンロードしてご参照ください

<議論の要点>

  • 市立八幡浜総合病院がん緩和ケアチームの活動報告
  • 疼痛コントロールについて。
  • 患者様の「家に帰りたい」のことばに秘められた様々な意味についてどのようにスタッフは受け止めたか。
  • 看護師の仕事として、家族構成などを詳しくまとめ、エコマップの作成をしておくことが後々のかかわりの中で重要になってくること。

<職種別参加者数>

合計  57名
医師 12名 社会福祉士 2名
歯科医 0名 ケアマネ 13名
保健師 7名 介護 4名
薬剤師 2名 その他 0名
看護師 15名 事務 2名

<アンケートから>

以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  • 介護師

    社会資源が少なく、独居、老老介護、家族が遠方の方等、様々な問題があり在宅での看取りが困難な方は多いと思います。在宅に少しでも帰りたいと希望されたら、ご本人のお気持ちに沿えるようにキーパーソンに伝え、実現に向けて命に向き合うことが大事なのだと思います。

  • 介護師

    「家に帰りたい」の言葉の重みを感じました。それがその人の最期を迎える場所と考えると、家族がどう考えるのだろうか、何か家でしたいことがあるのだろうかと色々考える所があるのだと思いました。自分が「人生最期の場所」を考えるとやっぱり家かなと思いました。

  • ケアマネ

    ジェノグラムの重要性、取り方はとても参考になりました。

  • 薬剤師

    やはり患者さんは相手によって、自分の思いの伝え方が微妙に違ってくるように思いました。

    疼痛に関しては、その時の状況に応じて少し増減もあろうかと思いますが、レスキュー等の使い方を再度、勉強しなければならないと思いました。

    終末期は、その人の生きてきた道のりが凝縮されたものになると思いました。一つの言葉では語りきれず、皆が納得できる方向への導きは本当に難しいです。短い間に様々な情報を拾い集める事も大切である事、またその情報の拾い方も勉強になりました。

  • 看護師

    2年前に食道がんで家族を亡くした経験があります。転移、痛みはなかったけれど、食道と気管がつながってしまい痰の量が激しかったです。最後に私にできることは、身体のケア、栄養(鼻腔)注入だけになってしまいました。医師に何もできないと診断され目の前が真っ暗になりましたが、家に連れて帰ろうという判断に迷いはありませんでした。訪問看護師を始め1年が経とうとしていますが、終末期の利用者さんが増えています。マンパワーが足りない現実もあります。当時担当して頂いた市立病院の担当医師はとてもやさしく、無理なお願いも聞いてもらった記憶があり、とても感謝しています。終末は不安で病院を望まれる家族、本人さんもおられます。どこまで家族と向き合えるか、辛い時に何を聞けばいいのか、どう聞けばいいのか、手探りの状況に直面しています。

  • 医師

    Pain controlの難しさを痛感いたしました。今後、在宅医療の流れが加速していく可能性もあり、pain controlの1つのマニュアルが必要と考えます。また、家族の関与を必要以上に求めていくのは、現実的ではないと思いますので、きちっとした医療関係者の介入がやはり必要だと思います。

  • ケアマネ

    「帰りたい」という言葉の中の本当の思いを知ることの大切さ、そして、その思いに寄り添うために何ができるか、どうしていくかをしっかり考え、これから関わりをもって行きたいと思いました。

  • ケアマネ

    医療従事者の視点での話や接遇のポイントや考え方など色々な見方の自己覚知をすることができました。得た情報から更に一歩踏み込んで関わっていくことの大切さを改めて感じました。

  • ケアマネ

    理想と現実はなかなか開きが大きく、社会資源、人手不足等少しでも検討し進歩できればと思っています。

  • ケアマネ

    市立八幡浜総合病院の緩和ケアチームの経過報告を聞いて、患者様の症状緩和が全体の60%以上となるよう頑張る取組みがとても興味深い結果だと思いました。

    チームでの取組みが患者様の苦痛を緩和していて素晴らしいと思いました。

  • ケアマネ

    末期がんの方を数名担当させていただいており、色々悩みながらも、専門的なご意見、ご助言をもらいながら対応しています。本日の症例のように「帰りたい」という本人の思いにどこまで寄り添って支援できるか、家族等のサポート等しっかり聞き取り、貴重な命の時間を共有できるようしっかり勉強して対応できるようになりたいと思います。

  • 保健師

    家族としてのペットの存在は重要と思いました。入院先でペットに会える機会をもてたのは、ご本人にとってとてもパワーになったと思います。そんな細かな配慮は有難いし、広がっていったら良いと思いました。

  • ケアマネ

    社会資源が少ない地区のケースだったので、地域の社会資源について話ができれば良かったと思いました。

第58回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成31年2月1日(金);午後7時~8時30分

<症例>

74歳、女性

<傷病名>

甲状腺乳頭がん、多発性肺転移

<発表者>

①医師会コーディネータ¬ーより家族背景などについて
 八幡浜医師会・清水 建哉ケアマネージャーから
②在宅主治医より病状経過について
 三瀬医院・片山 均先生から
③在宅生活の経過について
 八幡浜医師会訪問看護ステーション・松平 直美看護師から

<症例>

2009年7月、甲状腺乳頭がんの診断で甲状腺亜全摘術を施行された。その後、2010年2月に両側多発肺転移を認めた。放射線療法(内照射)や化学療法を継続したが副作用のため治療の継続が困難となり、2018年8月1日から在宅緩和ケアを主体に在宅療養となった。
当初は、予後は在宅療養開始後2~3週間ではないかと推定されていたが、在宅での平穏な環境と疼痛や呼吸困難に対して主治医の薬剤の工夫や多職種スタッフのケアの工夫で予後の延長が診られ、同年10月9日、永眠された。

<議論の要点>

  • 疼痛、不眠、不安などの症状コントロールについて。
  • 2∼3週間の予後と考えていたが、予想外に生存期間が延長した。ご家族が献身的に看護・介護されていましたが、ご本人、ご家族ともに療養期間が長くなることに伴う精神的負担を軽減するために適宜病状説明や方針の修正を行うなどの対応が重要と思われた。

<職種別参加者数>

合計  53名
医師 6名 社会福祉士 1名
歯科医 2名 ケアマネ 14名
保健師 5名 介護 4名
薬剤師 2名 その他 1名
看護師 17名 事務 1名

<アンケートから>

以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  • 看護師

    精神的ケアは難しく、ただ傾聴するだけではなく、気分転換ができる何かを見つけることも必要だと思いました。また、本人と同様、ご家族への関わりやケアも大切だと実感しました。

    辛い思いに対してこちらが思いを共有し「辛いよね」と言葉に出して伝える事も大事であり、今後のケアに活かしていきたい。

  • 看護師

    薬を飲む事=生きる事であり、薬を減らすことの大変さを知りました。

    疼痛スケールを使い、オプソ使用前後の評価を行いたい。

    身体的な疼痛なのか、スピリチュアルペインなのか、しっかりアセスメントしたいと思います。

    無念さを傾聴すること(受け止めること)が受入れの第一歩であると思いました。

  • 介護士

    スピリチュアルペインは調子が良い時に出てくるので、夜眠れなくなることもあります。ご主人の献身的な介護を受けながらも不安が大きくなっていたようです。やはり、カンファレンス等により多職種でご本人の思いを傾聴し支えていくことが重要だと思います。

  • 看護師

    在宅医療・自宅で看取るためには本人、家族や医療関係者を交えてカンファレンス、病状、体の変化が起きることにどう対応したらよいかなど、納得するまで話し合い、寄り添って見守り、話し相手になれることが大切だと思います。

    在宅医療を24時間体制で守ってもらえる安心感が、最後まで最高の人生を終わらせたと思いました。

  • ケアマネ

    本人のしんどさ、辛さを本当に分かってあげられているか。どう接したらよいか難しいと思います。

    鎮静することの意味や方法を考えることが大事だと思いました。

  • 看護師

    緩和ケアの方の訪問看護に関わった時に、声掛けに戸惑うことが多くあり、そういう時の会話方法(答え方)を聞けたので今後実践しようと思います。

    日々の仕事のなかでも気を付けていきます。

  • 保健師

    医師、訪問看護師、ケアマネ、コーディネーターなどの連携を図るこのモデル事業が継続し定着して、この地域で在宅療養ができるのは本当に有難いと思います。

    「薬=生」「不安がある人に余命を伝えるとより不安にさせる」「死ぬことを考える時は少し余裕がある時」など細かい本人の気持ち等知ることができました。

  • 保健師

    患者さんの思いを受容してあげること、代弁してあげること、そのような関わりも大事であることを気付くことができました。

    本人が何を考え、どう過ごしているか、関わりを通して関係者が引き出していけたらいいと思います。そのためにもスタッフ間の情報共有が必要だと思います。

  • ケアマネ

    私自身、まだ看取りのケースに関わることが少なく、どのように声をかけたらいいのか悩むことも多くあります。先生や看護師の関わり方等を聞かせて頂き、実際に傍らで見させて頂きながら、少しでも不安が軽減してあげられるようにしたいと思います。

    専門用語の使用や、受容や共有(認める)の大切さも改めて感じました。

  • 薬剤師

    患者さんは医療者に対して、各々見せる表情、感情が違っていることからその情報を交換し合える場所が大切だと思われました。

    私にとって、忘れる事のできない患者さんとなっております。そして、今でも後悔の思いが残っています。何が正解なのか全くわからず、今も考え続けて、時折涙をためていた眼を思い出してしまいます。本当は減薬の方は話を持って行きたかったのが本音なのですが、それを言ってはならない時もあるのでないかと思いました。

    こうして忘れずにいることが、患者さんへの恩返しになれば良いと願っています。

  • 介護士

    ご本人の苦痛がある中で家族の思いや辛さがあった、またご本人も家族も命ということに向き合ってすごく頑張ったと思いました。

    余命が最初2週間ぐらいだったのが、2か月も伸びたのは、在宅(自分の家)だからなのではないかと思います。意外に家に帰ると元気になったりするので、やっぱり在宅はいいと思います。

第57回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成31年1月11日(金);午後7時~8時30分

今回は、旭町内科クリニックの森岡が、
「これからのことを話し合うー臨床倫理カンファレンスで、困難事例を多角的に捉える」
と題してレクチャーしました。以下に発表スライドを掲載しました。

▶ 「これからのことを話し合う-臨床倫理カンファレンスで、困難事例を多角的に捉える」(PDF)

<職種別参加者数>

合計  46名
医師 8名 社会福祉士 2名
歯科医 1名 ケアマネ 11名
保健師 5名 介護 0名
薬剤師 2名 その他 0名
看護師 16名 事務 1名

<アンケートから>

以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  • 介護士

    終末期医療における様々な倫理的問題は、どうやって解決すればよいのかはその人によって全然違います。本人の意思を尊重できる場合は良いが、できない場合に家族や知人で判れば良いが、独り身の人はどうするか、とても慎重にかつ丁寧に対応していかないといけないと思います。多職種の連携がすごく大切なので、情報の共有をしていきます。

    在宅でその人らしく生きる為の幸せのお手伝いができればと思います。

  • 介護支援専門員

    ACPに基づいてその人らしい穏やかな気持ちで最期を迎えることができるように少しでもお手伝いできればと思います。

  • 医師

    人間の生死のproblemは人間には(本人にも)決められないと思います。日本人はあまりに豊かで、皆人生がhappyである事は当然と思っていると思います。しかし、私は生きるものは必ず滅す、という事をもう少し真剣に考えるべきだと思います。また、正義とは何かという問題を考えようともしない、その意識が希薄である人が多いと思います。医師として私がこんなことを言うのはあまり穏やかなものではないとは私自身も自己認識はしています。

    今後、この地域は高齢化が進むのは間違いないことなので、私自身もっと真剣に考えようと思います。私がこの地域の終末期医療に多少でも貢献できればと思います。

    どうかこれから私にも手助けをさせて頂ければ幸いです。

  • 看護師

    自分の人生は自身が決めるべき、そういった考えを早くから理解できる教育こそが必要だと思います。

  • 看護師

    終末期の問題は難しいことですが、色々意見を聞くことで勉強になりました。

  • 保健師

    愛媛新聞で「地域の明かりに」を拝見しています。活動が住民に広く知られることで、在宅看取り(1つだけの特別病室)が選べる地域が増えることを願います。

第56回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成30年12月7日(金);午後7時~8時30分

<症例>

85歳、男性

<傷病名>

多発性脳梗塞後遺症、再発性誤嚥性肺炎

<発表者>

①医師会コーディネータ¬ーより家族背景などについて
 八幡浜医師会・清水 建哉ケアマネージャーから
②在宅主治医より病状経過について
 旭町内科クリニック・森岡 明医師から
③在宅生活の経過について
 八幡浜医師会訪問看護ステーション・坂本 美恵子看護師から

<症例>

多発性脳梗塞で寝たきりとなり、誤嚥性肺炎を繰り返し、終末期は絶飲食で、持続皮下点滴を実施。皮下点滴開始後3か月でご臨終を迎えられた一例

<議論の要点>

  • 非がん緩和ケアについて、終末期肺炎の場合について生じうる問題点について、多職種のそれぞれの立場から様々な意見が出ました。
  • 森岡医師の提示した症例報告を以下のPDFファイルで掲載しました。
    【症例PDF】ダウンロード

<職種別参加者数>

合計  39名
医師 6名 社会福祉士 2名
歯科医 1名 ケアマネ 6名
保健師 4名 介護 2名
薬剤師 2名 その他 0名
看護師 15名 事務 1名

<アンケートから>

以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  • 歯科医師

    最後まで口から食べるという支援の難しさ、共感します。

    家族の話をしっかり聞くことは難しいですが大切だと思います。

    私は奥様の気持ちがよくわかります。

    熱心にされているからこそ、行動、言動に出るのだと思います。

  • ケアマネ

    主治医としての問題の捉え方、問題の対応方法について、具体的に聞くことができて良かった。

  • ケアマネ

    自分の意志を伝えられない本人の意志、思いが置き去りになっていないのか確認することが必要。その都度、本人の意志確認を振り返ることが必要。介護者である妻の思いを受け止めてあげることも必要と思いました。

  • 薬剤師

    否定しないこと、認めること、そして導くこと、その段取りの中で、相手の過ごしてきた時間、経験を汲み取ることが難しいです。課題発見力、想像力は大切なのだと考えさせられました。

  • 保健師

    段階を踏んだ本人の意志確認の必要性について考えることができました。関係者がチームとして、何のために支援しているのか、本人の意向を見失わないこと。決して家族の意向ではないことを話し合いの中で共通認識を持っていたら良かったのではないかと思いました。

第55回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成30年11月2日(金);午後7時~8時30分

<症例>

70歳代後半、男性

<傷病名>

筋萎縮性側索硬化症

<発表者>

①医師会コーディネータ¬ーより家族背景などについて
 八幡浜医師会・清水 建哉ケアマネージャーから
②在宅生活の経過について
 八幡浜医師会・松平 直美看護師から
③在宅主治医より病状経過について
 矢野脳神経外科・矢野 正仁医師から
④終末期に矢野脳神経外科に入院、看護経過の発表
 矢野脳神経外科・奥谷 員代看護師から
               それぞれご発表いただきました。

<症例>

2017年発症の筋萎縮性側索硬化症で、大学病院で精査後、2018年3月在宅医療の開始となった。

<議論の要点>

 第52回紹介事例のその後について
  • 緩和ケアを主体に今後どのように関わったかについて、多職種連携で話しあわれた。
  • 終末期は、入院看取りとなった。

<職種別参加者数>

合計  62名
医師 8名 社会福祉士 2名
歯科医 2名 ケアマネ 14名
保健師 5名 介護 5名
薬剤師 3名 その他 1名
看護師 21名 事務 1名

<アンケートから>

以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  • ヘルパー

    今回は、以前の症例の振り返りやグリーフケアの発表でしたので、本人様の気持ちや家族様の気持ちがより詳しく理解できました。

  • ケアマネ

    前回の研修では、症状、治療方針、連携等の報告でしたが、今回は実際どのような介護をされたのか具体的な報告を聞かせて頂き参考になりました。

    関係者が本人の意思を尊重しながら、医療、介護が提供できたのではないかと思います。終わってみるともっと違った関わりができたのではと後悔することはありますが、これが最善というのは無いのではないでしょうか。

    その時、その時点で本人や家族に寄り添いながら、各自が専門職としての自覚を持ち対応することで、在宅医療が進むことを期待したい。自分自身も在宅医療の専門スタッフの一員になれるよう努力したい。

  • 歯科医師

    患者の考え、想いと医療に関わる者の考えはイコールではないと思います。しかし、伝える事が大切だと毎日思っています。

    誰がどのタイミングで、しっかり伝えたかを確認しなければならないのです。

    最期はどんな形でも、残念ですし悲しいことです。皆、きっと自分の事を聞いて欲しいのでしょう。認めてほしいのでしょう。

  • 薬剤師

    苦しむ人に「何かをしてあげる」ことは、独りよがりで押しつけになってしまう。「共に生きること」と心を通わせることが大切ではないか。「ただそばに来てくれるだけでいいのに」亡くなられた方の最後の言葉のひとつを見つけました。

    今まで生きてきた時間を感じ取る能力があれば、もっと共に生きて行けそうに感じます。

    あらゆる方向から1人の人を見つめる事の大切さ重要さを感じました。

    言葉にすることで不安を伝え、安心できるのが人なのかもしれないと感じました。

  • 看護師

    癌でないケースでの終末期の症例を聞かせていただき、ありがとうございました。

    ALS病院以外で患者さんにお会いしたことがありません。

    在宅で呼吸器を使用せず過ごされ、最期を迎えられる方がいらっしゃったのは吃驚しました。

    本人が自然に何もしないでと希望される中、呼吸困難時はどうされたいか、段階ごとにインフォームドコンセントして選択していくことが本当に大切だと思いました。だから吸引も拒否されていたが、楽になることが理解できたため受入れられたと思います。自分も段階に応じて医者と相談しながらインフォームドコンセントしたいと思います。

    スピリチュアルケアはいつも悩むところです。患者さんとの関わりの中で言葉に対してもフィードバックできるよう改めてコミュニケーション技術の大切さを考えました。

  • ヘルパー

    気管切開を選択すれば、明確に自分の生き終え方を決定されてしまいます。「家で死にたい」としっかりと意思表示をされており、呼吸不全で亡くなることはご家族も了解の上看取られています。呼吸苦は必ずあるので呼吸困難前に薬等で苦しまずに楽に過ごせることができたらと思います。

    病院から自宅に帰ることはできなかったですが穏やかな最期であったので、ご本人、ご家族の想いの通りだったと思います。

  • ヘルパー

    重度の方の支援に入らせて頂いて、「生きているのがもう嫌になってきた」とお言葉がありましたが、自分なりに冗談を交えたり、励ましたり、安心できるような会話をしています。それぞれ役割があるため医療的なことはできませんが、その人の想いを汲み取り安心して最期まで過ごして頂けるように支援していきたいと思います。

    利用者さんに「ありがとう」とお言葉を頂くと私たちも救われたように思います。

    スピリチュアルケアや精神面のお話が聞けて良かったです。

  • 看護師

    段階をおってインフォームドコンセントしていく重要性を感じました。

  • 保健師

    今日の様な経過報告もありがたいです。

    今回のケースの支援評価は、奥様の(グリーフケア時の)言葉が全てと思います。

    中橋先生が言われた、本人にとって楽になるための終末期を関係者がどう共有するか。最後の訪看さんの本人、家族の様子など伺い、今回も深いなと感じました。

  • 看護師

    ALSの患者さん2名訪問させてもらっています。

    私たち看護師も未知への不安があるなか、症状や予後対応について資料で調べ、また勉強会に参加して受入れができた状況です。受入れができたからではなく不安な日々を過ごすことを解消し、不安なとき辛い時はいつでも相談してもよいですと伝えています。

    考え方、治療など今後の対応に役立てることができそうです。

  • ヘルパー

    利用者にALSの方がいらして、今後の支援にいろんな話が聞けると思い参加しました。

  • ケアマネ

    吉田先生が言われた、決めることが目的ではなく、その時、その時で選択した決定が最善の選択でプロセスを大事にすること。だから答えがないというお言葉に何か心が落ち着きました。

第54回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成30年10月5日(金);午後7時~8時30分

<症例>

80歳、男性

<在宅医初診日>

平成30年8月27日

<訪問診療期間>

平成30年8月27日~9月6日

<傷病名>

原発性肺癌、胸腺癌

<病歴>

2018年6月8日に嗄声にため近医より市立宇和島病院耳鼻科を紹介受診し、胸腺腫瘍と左肺門部腫瘍のため同院呼吸器外科を紹介された。
胸腺腫瘍は径47㎜で左腕頭静脈浸潤があり、左肺門部腫瘍は縦隔リンパ節腫大を伴っていた。
左反回神経麻痺、左横隔神経麻痺を認めた。
喀痰細胞診で扁平上皮癌を認めた。左肺門部扁平上皮癌および胸腺癌と診断され、同年7月7日より化学療法・放射線療法が開始された。
その後PS低下のため化学療法は中止され、放射線療法60Gyを終了した時点で8月24日退院となった。
Best Supportive Care単独の適応と判断され在宅医療開始となった。

<発表者>

八幡浜医師会・清水建哉コーディネーター
市立宇和島病院・緩和ケア認定看護師・井上 幸子看護師
               から家族背景などについて
三瀬医院:片山 均医師より症例経過について
訪問看護ステーションひかり・矢野 和恵看護師より
               それぞれご発表いただきました。

<議論の要点>

  • 著明な食欲不振、倦怠感と注射・内服拒否に対する対応に苦慮した点について。
  • ステロイドの適応があるが、内服拒否された時の対応と考え方。
  • 診断時に、早い段階での在宅医との連携について。

<職種別参加者数>

合計  59名
医師 9名 社会福祉士 2名
歯科医 1名 ケアマネ 11名
保健師 3名 介護 7名
薬剤師 4名 その他 1名
看護師 20名 事務 1名

<アンケートから>

以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  • 薬剤師

    人は生きたい・・・の言葉が有難かったです。本人、家族は、生きる可能性がゼロに近づいても、諦めきれないのかもしれないと思います。

    本人が生き抜くための選択肢を多く示すことが大切だと思います。

    薬剤師は薬を届けることができないので力不足を日々感じています。

  • 看護師

    多方面からの意見が刺激になりました。

    経験を積んで緩和ケアのQOLを上げたいと思いました。

  • 保健師

    本人、家族が病気の事を理解し(経過も含め)、在宅でよく看取られたと思います。奥様はもちろん、お子様のサポートもあっての事かと思います。また、本事例もチーム医療スタッフのサポートのおかげだと思います。栄養士さんもチームに入っていたら、栄養摂取など奥様の不安な気持ちのサポートになったかもしれません。

    以前、鍼で少し食欲がアップしたということも伺ったので、色々な方の知恵で少しでも楽に過ごせる時が持てればよいと思いました。

  • 鍼灸マッサージ師

    今回の症例の腰痛について、仙腸関節機能障害と股関節周囲筋、特に腸腰筋・内転筋の過緊張も考えられる。

    PTが介入しているのであれば、そのようなアプローチを実施すると本人の腰痛がずいぶん緩和され、心を開くきっかけになったと思いました。

  • 看護師

    スケールを利用していくことは今後使ってみたいと思います。

    我慢させないケアを心がけたいと思いました。

  • ヘルパー

    ご本人が死を受け止めてはいるが、内服や注射を拒否されると苦しみが増すと思います。痛みの症状を緩和できれば、ご家族も気持ちが楽になるのではないでしょうか。

    家に帰り思い通りに家族と過ごせたことで満足できたと思います。

  • 看護師

    本人の希望にそった看護ができるように支援をするための連携が大切だと思います。

  • 看護師

    今回の症例の患者様の訪問看護を実際に行い、服薬拒否や食事拒否を行う患者様の看護の難しさを実感しました。

    そもそも病院に対して不信感を持った状態で家に帰り、医療従事者や医療行為に対して拒否的であったのですが、ベテル病院の看護師からのお話であったように、本人は「いつ死んでもいい」と言われていたが、まだ治療に希望を持っていたと思われ、もっと本人に傾聴し本音を聞き出すことができれば良かったと思います。

    痛みに対しても、あと追いのようになった感じがあり、医者との連携の重要性を実感しました。

    ターミナルケアを今後行っていくうえで、症例毎に対応していけるよう日々学んでいきたいと思います。

    訪問看護で、入浴において躊躇することは多く、命を短くすることを怖がるのではなく、本人とそのことについて話し、医者の協力を得て、QOLを高める為に考える必要があると学びました。

  • 看護師

    緩和ケアではまず、患者さん及び家族の一番の希望を聞くことが大切で、様々な情報の提供をしながらベストを尽くし、患者さんの言葉を聞き漏らさず一つ一つを聞き取る重要性を痛感しました。

  • ケアマネ

    服薬拒否の中にある本人の本心、本音を分かってあげることは簡単なことではないと思います。

    今後関わることがあるならば少しでも寄り添い、気持ちを和らげてあげるよう関わりを持ちたいと思います。

  • 看護師

    ご本人の性格が難しい方のようでしたが、振り返りで色々な方法やオピオイドの使用について等勉強になりました。

    また、痛みに対して客観的に判断する必要性や、スケールを用いて医者と共有できるように、訪問した時に適切な情報収集ができるよう声掛けたいと思いました。

    一つ気になったことは、入浴を希望されており「風呂もはいれない」「痛みもとれない」「自分の思った通りにならない」などと絶望的になられたのでしょうか。バイタルサインが安定している時に半身浴でもできると、本人の達成感があったのだろうと思いました。

    「どうしてしたくないのか」「どうしたいのか」本人の希望が聞けるように会話のスキルアップが必要だと思います。その人の辛さに共感して本人がどうしたいのかという気持ちを大切にしなければならないと思いました。

  • ヘルパー

    今回の症例の方は、家に帰られて僅かな時間でしたが、本人もご家族の方も幸せな時間を過ごされたと思います。

    患者さんは家に帰っても、覚悟はできていても、希望は捨てないということをしっかり胸にとどめて、これからも寄り添った介護ができるよう頑張りたいと思いました。

  • ヘルパー

    今回の症例の方は痛みの軽減の希望が大事だったのがわかりました。でも「家に帰りたい」というのは帰れて安心はしたと思います。次の希望が「自宅のお風呂に入りたい」に対して、訪問入浴の説明だけでもお伺いしたかったと思います。例えば、温泉が好きということであれば露天風呂みたいな感じで庭での入浴という方法も説明できたと思います。

第53回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成30年9月7日(金);午後7時~8時30分

<症例>

69歳、男性

<在宅医初診日>

平成30年5月10日

<外来診療期間>

平成30年5月10日~6月14日

<訪問診療期間>

平成30年6月19日~6月30日

<傷病名>

肝門部胆管癌

<病歴>

平成28年11月 肝門部胆管癌と診断された。平成28年12月26日 拡大肝左葉切除、肝外胆管切除。術後化学療法ジェムザール⇒TS-1⇒TS-1+GEMを行ったが、腫瘍マーカー増悪し、その後の化学療法のレジメンもなくPSも低下してきた。
平成30年4月3日、本人と妻にBSCの方向性が確認され、化学療法中止となった。
癌性疼痛と考えられる腹痛および夕方の発熱(腫瘍熱疑い)を認め、カロナール内服、癌性疼痛はオキシコンチン30mgとレスキューでオキノーム散3回から4回で対応された。
便秘が以前からあり、センノシド、大建中湯およびマグミットで随時調節。癌に伴う右胸水も認め利尿剤で加療開始となっている。
県立中央病院主治医は予後は3ヶ月以内と考えている。
しばらく通院継続し、通院困難となったら訪問診療による在宅緩和ケアの計画となった。

<発表者>

八幡浜医師会・清水建哉コーディネーターから家族背景などについて
旭町内科クリニック:森岡 明医師より症例経過について
訪問看護ステーションSetsuko・菊池 世津子看護師より

<議論の要点>

  • 妻が医療関係者であり、薬物治療への理解もあった。
  • ご本人は病気のことについて十分理解されており、時折悲嘆感情を見せられたが、最後まで気丈に振舞っておられたことが印象的だった。
  • 最後の終末期に十分な疼痛や全身倦怠感、呼吸困難感の緩和が不十分な印象が残った。より良い薬物治療の方法について検討が必要と思われた。
  • 一方で、娘親子が予定を早めて帰省し、2人の孫娘(小学生)に会えたことで、一定の心理的な緩和が得られたように思われた。

<職種別参加者数>

合計  59名
医師 11名 社会福祉士 2名
歯科医 1名 ケアマネ 12名
保健師 5名 介護 2名
薬剤師 6名 その他 1名
看護師 18名 事務 1名

<アンケートから>

以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  • 薬剤師

    緩和ケアとは、その人が最期までその人らしくいるための手助けなのかもしれないと思いました。

  • 保健師

    病状の経過に対するチームケアとして医師、看護師、ケアマネの役割の明確化が大切と思いました。本人、家族に対して医師、看護師、ケアマネがそれぞれどのような支援をされたか知りたいと思いました。

  • ケアマネ

    家族の中に医学の知識をもつ専門家がいると、良い面と悪い面がある事がわかりました。

  • 介護支援専門員

    奥様が献身的に介護されたようですが、ご本人が痛みと呼吸困難で七転八倒された様子を傍で見ながらの介護は、精神的負担がかなり大変だったと思います。楽な最期を過ごすことができればと思いますが、薬物治療の難しさを改めて感じました。

  • 看護師

    実際の現場において、呼吸困難時の対応について難しさを感じていました。痛みはある程度軽減されても、呼吸に対しての訴えは、看護介入が難しく、今後勉強していく必要があると思いました。

    麻薬に対して拒否的な利用者様、家族もあり、看護師が使用ハードルを下げる役割を担うことが大切だと学びました。

    今後も利用者様の状態を細かく把握し、医師へ速やかに報告することで緩和ケアが十分に行えるよう努めたいと思います。

  • 看護師

    呼吸困難感をどうやって取っていくのか。薬の使用のタイミングの難しさを知ることができました。

    短い期間の関わりの中で、寄り添う看護の大切さの事例発表を聞いて、寄り添うことで患者さんの信頼が得られることの重要性を学びました。

  • 保健師

    患者様、ご家族にとって、医師を含めてよい関係性を得られる医療職の人との出会いはとても大切と痛感しました。その人らしく最期が迎えられたのは、医師、看護師等の関わりがあってこそだと思いました。

  • ケアマネ

    最期まで自宅で過ごせたこと、本人より「延命はいらない」という言葉がでた時、家族とともに最期を迎えたことなど、本人も家族も自宅で亡くなることを受入れることができたのではないかと感じました。

    薬に対する知識について、詳しい情報が多くある事で、逆に家族が苦しむことがある事を教わりました。情報について、家族は自分が納得しやすい形で受け取ってしまい、実際と違う答えを出していたりする可能性もあり、その溝が不信感を生み、危険もある気がしました。

    初めの印象で良い医師と思っていただけることが後の支援への影響があると思いました。

第52回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成30年8月3日(金);午後7時~8時30分

<症例>
  70歳代後半、男性

<傷病名>
  筋萎縮性側索硬化症

<発表者>
  ①医師会コーディネーターより家族背景などについて
   八幡浜医師会・清水 建哉ケアマネージャーから
  ②愛媛県難病医療コーディネーターより発症から入院、退院までの経過説明
   愛媛大学医学部付属病院・是澤 志保看護師から
  ③在宅主治医より病状について
   矢野脳神経外科・矢野 正仁医師から
  ④在宅生活の経過について
   八幡浜医師会・坂本 美恵子看護師から
  ⑤薬物治療などについて
   いろは薬局・井上 正廣薬剤師から
  ⑥難病医療費助成制度について
   八幡浜保健所・古谷 光保健師から
  ⑦市役所福祉課の仕事内容について/
   八幡浜市役所担当課・萩森 純一氏から

   それぞれご発表いただきました。

    <症例>
    2017年発症の筋萎縮性側索硬化症で、大学病院で精査後、2018年3月在宅医療の開始となった。

    <議論の要点>
    ●緩和ケアを主体に今後どのように関わるかについて、多職種連携で話しあわれた。
    ●ご本人は「延命はしないでほしい」との意思表示をされている。しかし、在宅での生活が、苦痛なく過ごせるように緩和ケアは希望されており、緩和的な処置が延命処置と誤解されることもあり、十分な説明が必要なのではないか。
    ●有効な治療法がない疾患であり、ご本人にとっては心理的な痛み・苦痛もあると思われる。このような視点からのカンファレンスは十分に行われているのか。可能なら臨床心理士もチームに加わる必要があるのではないか。
    ●難病医療費助成制度や市役所の支援制度などについて説明があった。
    ●病院側の意思統一にも疑問があり、十分に在宅医療が導入される素地ができたうえでのことではなかったように思われる。
    ●アドバンス・ケア・プランニングの実践が試される症例で、今後の各専門職の学習が大切なのではないか。

    今回はこれらの意見が出され、がん緩和ケアの基本的な思想にもつながる議論がなされました。
    PDF:ALSの緩和ケア
    PDF:難病医療費助成制度について
    PDF:市役所福祉課の仕事内容


<職種別参加者数>
合計  67名
医師 10名 社会福祉士 1名
歯科医 2名 ケアマネ 18名
保健師 5名 介護 5名
薬剤師 4名 その他 1名
看護師 19名 事務 2名
      <アンケートから>
      以下に参加者からのメッセージをまとめました。
    1. 看護師
       限定された人達だけでのケアでは、その人の生活は成り立たない。誰でもできるケアで生活は維持できると考えさせられました。
    2. 看護師
       患者様家族の病状の理解度、本音がどこまで医師側に伝えられるか、心を開けられるか、声掛けの必要性、難しさ、勉強の必要性を考えさせられました。
    3. 介護支援専門員
       延命をしたくないと主張されていても、怖がりの性格であれば気持ちに変化がみられることもあるので、その都度に意思決定の確認は必要なのだと思いました。
    4. ケアマネ
       医療行為が必要な場合、それが延命処置ではなく緩和ケアという視点を学びました。
    5. ヘルパー
       在宅サービスを専門にしておりますが、ALSの方も何名か関わらせていただきました。ご本人、ご家族が後悔しないように常に考えておりますが、やはり最期になると、求められるものと、提供できるものに差があるのも現実です。地域で生活を望む方々について、このような会を開催されることはとても有難い事だと思いました。
    6. ヘルパー
       今回の症例の方はALSと診断され、ご本人や家族が病気への理解ができていなかった。延命はしないと言われるが、苦しい時には苦しみを取ってほしいと希望している。その時、その時の病状に合せて接する難しさを勉強させていただきました。
    7. ケアマネ
       医療面のケアだけでなく、ご本人の精神的ケアの難しさを感じました。傍で支える方はきっと大変な思いをされていると思います。
    8. 医療コーディネーター
       今回のALSのケースの方は、意思決定において一見、矛盾しているような発言でしたが、矛盾しているのではなく、目の前の視覚的情報で判断を行っている人であると思います。基本は死にたくないという意思があるが、苦痛に対しては、想像できないため、あのような発言になっているだけであると考えられます。その時にならないと考えられないのだと思います。
    9. 保健師
       私が関わるALSの方は数名いらっしゃいますが、気管切開をしている人はいません。病状が悪化して苦しくなっても、本人から希望されることもなかったです。しかし苦しいので訴えが強くなり、家族、訪問看護師の対応もいずれ限界がきて、眠剤投与して低酸素状態にするという事例しかしりませんでした。気管切開するとどのような生活を送ることになるのか、自分が想像できるようにしておきたいと思いました。
    10. 保健師
       意思決定について、本人、家族にその都度その都度丁寧に説明を行いながら、関係機関で共有していくことの大切さを改めて感じました。でも、やはりすごく難しいことだと感じました。



第51回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:八幡浜医師会館3階 会議室
  2. 日時:平成30年6月8日(金);午後7時~8時30分

<症例>
  75歳、男性

<傷病名>
  胸腺癌

<発表者>
  八幡浜医師会・清水建哉コーディネーターから家族背景などについて
  三瀬医院:片山 均医師より症例経過について
  八幡浜医師会訪問看護ステーション・坂本 美恵子看護師より
   それぞれご発表いただきました。

    <症例サマリ>
    平成29年10月くらいから顔面浮腫、体重増加、呼吸困難が出現。それまでは特記すべき体調不良等なく、かかりつけ医もなかった。
    平成29年11月11日に市立八幡浜総合病院受診。12月27日に両側胸水、前縦隔腫瘍を指摘された。平成30年1月17日精査目的で松山赤十字病院に紹介転院された。SVC(上大静脈)ステント留置後に酸素化悪化、血胸あり、人工呼吸器管理、右胸腔ドレナージ行う。平成30年1月31日、抜管後右頸部リンパ節生検実施するも胸腺癌の確定診断はつかなかった。
    平成30年2月6日ドレーン抜去するも2月11日酸素化悪化あり、C02ナルコーシス、胸水増加のためNIPPV装着,ドレーン再挿入し管理開始。
    平成30年3月2日炎症反応上昇、膿胸疑いのため抗生剤点滴開始。鼻カニュラ酸素1L/分にて酸素化保たれた。
    平成30年3月中旬 本人妻より在宅医療について八幡浜医師会訪問看護ステーションに問い合わせあり。
    平成30年3月20日 松山赤十字病院退院支援看護師より連絡あり。
    平成30年4月7日退院。片山先生が在宅主治医となり在宅医療開始となった。

    <議論の要点>
    ●症状出現時にはすでにかなり進行していたことがうかがわれるが、対症療法を実施しながらの精査だった。化学療法、放射線療法が検討されながらの退院で、在宅医療が導入された。
    ●おそらく治療医は、まだまだ抗癌治療で延命効果が期待されると判断されていた。したがって、予後の説明など不十分なままでの退院となった。
    ●在宅での経過中、急変し在宅11病日目で八幡浜総合病院へ救急搬送されたが回復することなくお亡くなりになった。
    ●中橋先生より、病状を家族やご本人がどのように理解していたのか、余命についての話は十分にされて認識していたのか、今後化学療法などするのかどうか明確に方針がさし示されていたのか、など重要なポイントが話し合われていなかったのではないかなどなど多くの疑問が残る。
    ●病院側の意思統一にも疑問があり、十分に在宅医療が導入される素地ができたうえでのことではなかったように思われる。
    ●臨床倫理の4分割表を利用した整理を日常的に実施する事が必要ではないか。

    今回はこれらの意見が出され、がん緩和ケアの基本的な思想にもつながる議論がなされました。


<職種別参加者数>
合計  61名
医師 10名 社会福祉士 2名
歯科医 1名 ケアマネ 15名
保健師 6名 介護 5名
薬剤師 2名 その他 1名
看護師 17名 事務 3名
      <アンケートから>
      以下に参加者からのメッセージをまとめました。
    1. 保健師
       本日の事例は実家の近くの方でした。幼い頃から知っているご夫婦だったので、グリーフケアでの奥様の言葉がイメージできました。近所の者としても、本人や家族が安心して逝ける対応や環境づくりを頂き感謝です。この事業を利用できて本当に幸せだったと思います。
       ただ、今までのケースもですが、やはり早期発見、早期治療が第一で、高齢になってもがん検診のすすめを推進したいです。
    2. 介護士
       今回の事例は特別な感じがしました。でも最終的には本人も家族様も納得されてよかったと思いました。主治医や訪看さんの対応が大変だったのに、本人や家族様に不安を感じさせないように対応したのが良かったと思います。
       大変勉強になりました。
    3. 介護支援専門員
       病院内での連携ができておらず、ご本人、ご家族の意思決定のプロセスがはっきりしないところで支援していくのは難しいと思います。
    4. 看護師
       患者様がスムーズに医療機関へ受診、入院できるように、また医療機関から退院、転院することができるように、改めて地域連携室について考えさせられました。
       症例検討会での吉田さん(ベテル病院)は、体験されたことを分かりやすく話されるのでいつも勉強になります。
    5. 事務員
       実際の体験や症例検討会に参加して聞く話で、常々疑問に感じる連携室の設置ですが、必要性や職務権限の範囲はどのようになっているのか、システム等分かりやすいものがあれば教えて欲しいと思います。
    6. 医師
       コーディネーターへの依頼時や状況変化した時に連絡できる雛形などはあるのでしょうか。作成されたら良いと思います。
    7. 看護師
       病院、連携室、訪看等、他職種間の連携の重要性を再確認しました。特に退院から最期まで時間が短い方では、連携がスムーズに行かないと在宅での患者様家族が過ごす時間が有意義なものにならないと感じました。
       訪看として、在宅で患者様の思いや意思(治療方針や延命等について)を充分に理解し、それを家族や病院側に伝えていくサポートとしての役割の必要性を痛感しました。
    8. ケアマネ
       意思決定のプロセスが大切だという事、本人と家族の意見をどうやって確認していくのか。プロセスの重要性を学びました。
    9. 保健師
       清水コーディネーターの家族訪問の内容、ドクターの説明の様子、本人らの言葉を使って報告して頂き、状況がイメージしやすかったです。短い時間の中で、家族と深く関わっていただいたからだと思います。
       今回は主に意思決定がテーマでした、保健所でも対象者に対し防災カードを作成します。その時に、もしものとき(災害時)どのような治療をするかも書きます。今回の学びを作成時に活かしていきたいです。
    10. ケアマネ
       最新の状態での意思をサポートすることの難しさ。
       しかし、その大切さをいつも勉強させて頂いています。
    11. 看護師
       本人の気持ちの確認なしでのケアはありえません。
       思いをよく聞き取ることが大切である事を再確認しました。
    12. 保健師
       本人、家族の病状理解、緊急時の意思決定、治療方針(本人が本当はどうしたいのか等)等について、在宅側の支援者としての強みを活かした関わりの重要性について学ぶことができ、大変勉強になりました。実際の関わり、支援に生かしていきたいです。



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※ 予約制により、原則月曜日〜木曜日の午後に一般外来と並行して物忘れ外来を行なっています。
上記電話番号より受付にて予約をお取り下さい。
なお初回診療は15:30〜17:30頃まで約2時間を予定しておいて下さい。

2019年1月7日~22日

<愛媛新聞掲載>

掲載許可番号
d20190822-006

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