第115回 八幡浜在宅緩和ケア症例検討会

  1. 場所:WEB会議
  2. 日時:令和6年6月7日(金);午後7時~8時30分

<症 例>
   80歳代後半 男性
<傷病名>
   肝不全(NASH:非アルコール性脂肪肝炎)、肝細胞癌、多発性脳梗塞

<挨 拶>
  開会挨拶
   八幡浜医師会会長
    芝田 宗生 医師
<発表者>
   進行:清水 建哉 コーディネーター
  ① 家族状況などの説明
    八幡浜医師会居宅介護支援事業所
        清水 建哉 コーディネーター
  ② 症例報告
    中野医院
       院長 中野 憲仁 医師
  ③ 訪問看護ステーションからの報告
    セントケア訪問看護ステーション
       所長 松平 直美 看護師

<症 例>
報告内容;PDFファイルをダウンロードしてご参照ください
第115回八幡浜在宅緩和ケア症例検討会資料

<議論の要点とコメント>

●今回の症例の感想について
門田ケアマネより:ケアマネとして関わりを持った、独居で予後が短く寝たきりの父親に対して仕事はあったが関わりの薄い家族に違和感を感じていた。
往診時など家族が不在の時は自分が同席し医師の意向を家族に伝える事で調整を行なった
中野医師より:最初から在宅看取りで話はしていたが途中病状が悪化し家に帰るのは難しいと感じたが家族が受け入れてもらった事で自宅で看取りが出来て本人の希望が叶えられてよかった。

●中橋医師よりどうして最終的に家族は自宅での看取りを受け入れたのでしょうか?
中野医師より:入院中も肝性脳症で意識がぼんやりして脳梗塞で言葉が出にくくなって何を言われているか分かりにくい状態でも「家に帰りたい」の言葉だけはしっかり聞き取れた。家族もあそこまで本人に言われたら帰らせたくなったと思う。
清水コーディネーターより:もともと家族関係が密ではなく距離のある家族でお互いの家に出入りすることもないご家族だった。もともと一人での生活を望んで帰りたいと言われていたのなら無理に仕事を休んでまで介護する必要はない、自分たちのサービスを活用して今まで通りの生活をされることが大切と助言を行った。
また中野医師が予後も含めて適切な病状説明をされたので家族が今後を判断出来たのではないでしょうか。
訪問看護・松平看護師より:最初の訪問で入院先の看護師を含め家族と関係者10人ぐらいでしっかり今後の支援について話し合えたのが良かったのではないか。
家族が不在だったので自宅に置いておいた連絡ノートを活用し家族と連絡を取り合っていた。出来る範囲ではあったが支援を通して自宅での看取りを受け入れて行ったのではないでしょうか。

●清水コーディネーターより本人と距離のある家族との関わりについて上手く関わる方法についてアドバイスをいただきたい。
太田社会福祉士より:距離を取っていると言うよりそれぞれが依存していない関係だったのではないか?それぞれが自立した存在だったからこそ相手(患者さん)に振り回されない関係だったのでは。
中野医師より:今まで外来で5年関わっていたが家族の同席は無かった、ただ病状説明で呼び出した時に拒否はなくしっかり病状説明も聞いてもらえた。
確かにそれぞれが自立されており自分の問題として考えられていたのだと思う。
患者さんに依存している家族より、依存していない距離のある家族の方が看取りが上手くいくように感じる。
清水コーディネーターより:何か問題が起きた時にそれが相手の問題か自分の問題かをきちんと考えて課題の分離が出来ていたからこそ上手くいったのだと感じた。
ここまでは家族で出来るが、十分に出来ない部分を本人がどう感じるか、本人がそれでも家で過ごしたいと考えたので看取りが上手くいったのではと考える。
中橋医師より:自身の体験も踏まえて患者さんと家族があまりに近いと家族が自分の事のように考えて上手くいかない事が多い。

●清水コーディネーターより今後増えていくお一人様の支援についてご意見を伺いたい
ことぶき荘・井上ケアマネより:先日も独居の方の看取りを行ったが民生委員さんが中心となり医療介護サービスを利用する事で独居の方でも自宅での看取りが出来た、支援者に感謝したい。
清水コーディネーターより:独居の方の支援を行うにはより一層多職種の連携が必要です。今回の事例でもメディカルケアステーションのアプリを利用する事で多職種の連携が可能になりました。中野医師からも情報の流れが分かり易かったとコメント頂きました。
包括支援センター・宇都宮保健師より:独居高齢者の場合は民生委員や見守りさんなどが必ず関わっているはずなので今回の支援ではどのような関わりだったのか気になりますね。
八幡浜はまだ地域の繋がりがあり電気が付いているか消えているかで気にしてもらえる。
地域でこんな人を一人で置いておくなんてという意見も出ますが難しいですね。
太田社会福祉士より:病気で一人暮らしの人の事が気になり、こんな人を一人で家に置いておくなんてと思う気持ちは、それだけその人の事を心配しているという証拠。
単純に地域から排斥しようとしているのではなく何とかしてあげようという気持ちからだという事に気がつかないといけない。

●地域包括支援センター・宇都宮保健師より絆ノートの紹介
八幡浜市として人生会議、終活の資料として絆ノートを作成した。
ケアマネジャーさんを中心に何部かは配布している、ホームページからのダウンロードも可能。
今回の事例の方のように生前元気な時からどのような最後を迎えたいのかそのための準備をどのようにするのか、このノートを利用して準備していってもらいたい。

<職種別参加者数>

合計  41名
医師 4名 社会福祉士 1名
歯科医師 2名 ケアマネ 10名
保健師 4名 介護 0名
薬剤師 4名 その他 1名
看護師 13名 事務 2名

    <アンケートから>
    以下に参加者からのメッセージをまとめました。

  1. ケアマネ
     ご本人が自宅で生活したいとの思いを支援者が共有し希望を叶えるという取り組みがとても素晴らしいと思いました。
     独居での看取り、本人の思いを尊重した医師からの説明、家族の心を動かしたこと、その流れをこの事例を通し沢山の学びを感じました。
  2. 保健師
     家族の在り様を考えさせられるケースでした。
     どのような内容であれ、地域からの発信があるということは関心があるということと捉え、対応したいと思います。
  3. 看護師
     メディカルケアステーション活用で連携がスムーズにとれていて、支援者みんながそれぞれ必要な支援を提供できていると思いました。
     発語困難になった時のサインを考えておくというのにも共感し、今後の参考にさせて頂きます。また、利用者の願いを支援者みんなが一生懸命叶えてあげようとしているのがよくわかり、これが「寄り添う」ということだと勉強になりました。
  4. 保健師
     「人生会議」や「看取り」については、まだ勉強を始めたところです。在宅での看取りの形は色々あり、まだまだ自分の中の意識が揺り動かされる感じです。
  5. 作業療法士
     対象者様とのかわり方や、地域の方々と寄り添いながら包括的にアプローチすることの大切さを学ばせていただきました。
  6. ケアマネ
     それぞれの専門職の方たちが、自分のやるべきことを、うまく連携を取りながら、上手に支援されており関心させられました。
     本人様にとって自宅で最期を迎えられ幸せだったことと思います。
  7. ケアマネ
     今回の症例では、「お互いが達観している」というワードが、頭に残りました。御本人は、子供さんたちと適度な距離感を保ちながら生活を続けてこられ、在宅看取りになってもその関係性を崩さずに子供さんたちは、程よい距離感で見守りをして看取られました。在宅看取りは、こうあるべきだ、というわけではないと思わせる事例だったと思います。友人の入れてくださったコーヒーは格別に美味しかったでしょうね。

愛媛県在宅緩和ケア推進協議会

「えひめ在宅緩和ケア」

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県内の在宅緩和ケアの現状やモデル事業の取り組みを、愛媛新聞に掲載されました。
許可をいただきPDFを掲載しました。ぜひご覧ください。
2019年1月7日~22日 愛媛新聞掲載

掲載許可番号
d20190822-006